いつかのバレンタインday









2月14日。




ラティーナとの連絡は、ここひと月くらい途絶えている。





ぼくにはぼくの、ラティーナにはラティーナの生活がある。





だから、連絡を取らないのだろうか?










今日はバレンタインデー。






日本では女性が主体となる日。






しかし、ラテンでは逆だ。





男が女性に愛を表現する日なのだ。








ぼくは会社の昼休み、ラティーナへのプレゼントを買いに行った。






買いに行く前から、和風の小物にしようと決めていた。






店ではいろいろ悩んだ。






でも、最終的には和柄のかんざしと花細工の髪ゴムを選んだ。






手づくりというわけではない。






でも、日本に興味があるラティーナに






ぼくが生まれた国の雰囲気を感じて欲しい。





そういうつもりで、和テイストのものを選んだ。







ぼくはラティーナに何かものを送るとき。






決して手紙を添えることを忘れない。






今回も小さなメッセージを添えることにした。






いろいろ書きたいことはあった。






でも最後は、2行にぼくの気持ちを込めることにした。





いろいろ書こうとすると、かえってぼくの気持ちが文字の陰に隠れてしまう気がして。






"No sé por qué tengo un sentimiento tan fino por ti”



「君を想うとき、ぼくはなんでこんな気持ちになるのかわからない」



"Me debes una explicación"


「君からぼくに説明してほしい(なんでこんな気持ちになるのか)」







あとは税関で引っかからず、無事ラティーナのもとに届くことを祈るだけ。





叶うならば・・・





このかんざしをラティーナが毎日、いや一度でもいいから身につけてくれたら。






そういう願いを全部封筒に詰め込んだ。





とても入りきれない、言葉にできない想いだったけど。





ぼくは、郵便局の人に「よろしくお願いします」と言って、午後の仕事に戻った。








その日の帰り。






電車の中でインスピレーションが降ってきた。






そしてiPhoneでずーっとラティーナへの文章を打ち込んでいた。





すると、うっかり快速電車で自分の駅を乗り過ごしてしまった。






そこでまたラティーナにささやいた。






“Hoy me pasé de la estación”


「電車を乗り過ごしてしまった」




"Por estar escribiendo mis sentimientos por ti”


「君への想いをつづるのに夢中で」




"Es que tu inspiración me lleva al otro mundo”


「君というインスピレーションはぼくを別世界に誘う」




"Donde mi noción del tiempo se rinde ante tu encanto”


「君の魅力のせいで時間が経つのも忘れて」




Continuará…

(次回へつづく)

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ラティーナに恋をした日本人トロバドール 〜ラティーナに捧げる愛の詩〜

ネイティブのようにスペイン語を操る日本人、早川優。 しかし彼は、ラテンのノリとは無縁の内向的な文学少年だった。 そんな内気な文学少年が、出張先で出逢ったラティーナ(中南米某国の女性)との恋を通じて、日本人でありながら、スペイン語で愛の詩(うた)を捧げるトロバドール(吟遊詩人)へと成長を遂げるストーリー。