あなたの目をした子どもが欲しかった



"Me hubiese gustado tener hijos con tus ojos"

「あなたの目をした子どもが欲しかった」





11年前のあの日。


ラティーナはぼくにこうつぶやいた。



"Me hubiese gustado tener hijos con tus ojos"

「あなたの目をした子どもが欲しかった」



ぼくの頭は、この言葉の意図がわからなくて思考停止に陥った。




でも、よくよく考えると、ラティーナには1年前に結婚したばかりの夫がいる。

二人の間にまだ子どもはいないけど。




それに、ラティーナは、



「ダンナとは出逢った瞬間、この人と結婚すると思った」

「さっきもダンナと電話で1時間くらい話し込んじゃった」



というくらいだから、きっと彼のことを深く愛しているはず。



でも、だったらなぜ、ラティーナは



"Me hubiese gustado tener hijos con tus ojos"

「あなたの目をした子どもが欲しかった」



なんていう謎かけをぼくにしたのだろう。



あまり女性経験がないぼくにはわからなかった。




「きっと深い意味はないよな。」


「ラティーナみたいな美人がぼくに魅力を感じるなんてありえない。」




ぼくは彼女のことばに深い意味はなかったと解釈することにした。




でもぼくは、ラティーナと別れたあと、家路に向かう飛行機の中で、眠りに落ちるまで考えてしまった。




君は一体どんなつもりで、



「ぼくの目をした子どもが欲しい」

"Me hubiese gustado tener hijos con tus ojos”



なんてつぶやいたの?





もちろん答えなんて見つからなかった。

何度も、「深い意図なんてなかった」と折り合いをつけようとしたのに、どうしても頭から離れなかった。





あれから11年。


ラティーナが別れ際につぶやいた言葉は、今でもぼくの胸の奥につっかえている。


Continuará…

(次回へつづく)

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